10年前引っ越してくるとき、本を大処分したんですが、
一番大量だったのが雑誌。
10数年分の『本の雑誌』があったんです。
同じく定期購読していた10年分ほどの『広告批評』は、
どうしても手放せず、持って来ました。
『本の雑誌』を処分するというのは、
なんだか椎名誠さんを捨てるような気分でした。
ええ、椎名さんの大ファンやったんです。
もう愛人になりたいくらい好きでした。
あほでしょ。
『本の雑誌』は読者の投稿ページもおもしろくて、毎月楽しみでした。
本の雑誌社の社員だった群ようこさんのことも、この雑誌で知りました。
コピーライターから作家になった林真理子さんも、うらやましかったけど、
雑誌社の事務員から作家になった群さんも、うらやましかった。
林真理子さんはどんどん嫌いになったけど、
群さんのことはずっと変わらず好きです。
エッセイも小説も好きだし、群さん自身がとても好き。
だいたいその人自身が好きでないと、エッセイを読みたいとは思えません。
小説は読むけど、エッセイは読まない、という作家さんは、
その人自身に興味がない場合です。わたしの場合は。
群さんの書かれるもので一番好きなのは書評です。
似たような本好きのニオイを嗅ぎ取って、なんだかうれしくなります。
『濃い人々』(いとしの作中人物たち)群ようこ
群ようこさんのエッセイを初めて読んだのは「無印良女」でした。
なんておもしろい!
と思い、それから延々と小説も読み続けています。
途中、これはいくらなんでも粗製濫造なのではないか?
と、疎遠になった時期もありますが、それでも完全に離れるまでには至らず。
特に彼女の書評は、素晴らしいです。
本物の本読みなのだなあと、感心します。
この作品は、小説、映画、ドラマなどの作中の人物に対する愛情溢れるエッセイです。
つるつる軽く読めるし、後々まで読後感が尾を引くほどの
印象も残さない読み物ですが、彼女の並々ならぬ才能も感じる作品でもあります。
作中の人物を物語のあらすじとともに紹介するわけですが、
それが実に過不足なく、的確で巧みです。
自分の体験や生活と織り交ぜて、さらさらと紹介し、さらさらと読ませ、
「ははは、なるほどねー」
と誰もがすぅーーーっと思ってしまう。
これはなかなかできない芸当だと思います。
自分を見せすぎず、そして決して良く見せようなどというイヤラシイ下心もなく、
淡々と職人のような仕事をこなす。
潔い女性なのです。
デビューのころから、彼女の作風も人間性も変わらないですね。
売れて、お金もどんどん入ってきて、着物三昧をしたり、
三味線を習ったりしても、下品な下心ののぞかない、清潔な女性です。
もう少し、女のイヤな色気や欲や狡さがあったなら、
結婚もして、おもしろいお母ちゃんになって、
すんごくおもしろい作品を書いてくれたんじゃないかなあ。
と思ってしまうのですけれど。
ま、それも彼女の人生であって、読者が口を挟むモンじゃないし、
彼女の得がたい魅力であるとも思うわけですが。
(2007/8/6)