先日、また今度、と書いていました岸本佐知子さんについて。
むやみに誰にでも勧めているPR誌「ちくま」で知った翻訳者さんです。
『ねにもつタイプ』というエッセイ集が、この連載をまとめたもの。
薀蓄があるとか、気分が晴れるとか、大笑いできるとか、
そういうエッセイではありません。
しかし、そんな既存のエッセイの愉しみ方を凌駕するおもしろみなのです。
こんなエッセイは、かつてなかった。
翻訳モノは苦手なので、岸本さんの翻訳作品は未読なのですが、
この人が翻訳される作品は、やっぱり相当変わったものばかりなんだそうで
ちょっと読んでみたい気もします。
「講談社エッセイ賞」も受賞されてるのですが、
北上次郎さんは、この作品を全然評価しない、と断言していました。
「えーーー、なんでーーーー?」と思ったのですが、
「これはエッセイではない」という観点なんですね。
うむ。確かに。
これはエッセイではない、と言われれば、その通りかもしれぬ。
では、妄想日記ならよいのか?
北上さんは、ひょっとしたらこの妄想に作為を感じたのかもしれません。
でも、わたしは、岸本佐知子さんという人とお会いしたことはないけれど、
読者をナメた作為を弄する人ではなかろう。
と、思ってしまうわけですね。
この、奇想天外で、バカバカしくも哀しみすら感じる、突拍子もない妄想の数々。
好きです。
その有り得なさが、好きです。
誰も考えつかない妄想にとりつかれてしまう、作者が好きです。
ホント、選ばれた人だと思うんですよねぇ。
こんな人、おらんもん。
ほぼ同年代の方なのですが、いい雰囲気の美人さんでタイプは全然違うし、
シンパシーを感じるわけでもないのですが、
この静かなる滅茶苦茶さが、めっちゃ好きです。
実際は、どんな女性なんでしょうかねー
興味津々です。
『気になる部分』岸本佐知子
ひと言で言うなれば、すんごいヘンな人です。
翻訳家ということですが、元々はサ○ト○ーのPR誌作りをしていた
OLさんやったんです。この、
どー考えても、まともにOLとかできひんやろっ!?
って方の、OL時代の話が、まことにおかしい。
工場見学がてらに行った”「国際きのこ会館」の思ひ出”。
ウソ話かと思ってましたら、今は名を変え、現存していてビックリ。
(こちら→ホテルきのこの森)
まさに書いてあったことそのままで、笑いました。
でも、夕食のきのこのフルコースはおいしいらしいです。
30㎝くらいに切った丸太をオーブンでまるごと焼いた、
「シイタケの姿焼き」もあるとか。
お皿に載った丸太が、ドンと出され、
そこから生えているシイタケを豪快に手でちぎり、お醤油に浸して食すらしい。
これで宴会は、おおいに盛り上がるそうです。
で、これもおいしいんだって。
近かったら、ちょっと行ってみたいです。
職場で回文作りが流行ったこともあるそうで。
みなじっくり考えている暇も堪え性もないので、数で勝負しようとし・・・・
「レズバーのあばずれ」
「じいさまをマッサージ」
「イタチの痴態」
「トマトと新聞紙とトマトと新聞紙」
など低レベルな作品を乱発したために、すぐに廃れた。
らしい。
低レベルとおっしゃるが、なかなかこれらは考えつかへんと思います。
次に流行ったという「ことわざの言い換え」も、
バカバカしくて、非常におもしろかったです。
どんどんエスカレートして、なんでもアリになっていく過程が、
ありありと目に浮かびました。
でも、そういうのって、異常に盛り上がるんですよね。
実に想像にたやすい。
楽しかったんやろな~
彼女は翻訳家なので、日本語の本を読んでいても、
「これはどう訳すのか、悩むだろうなあ」
と、翻訳か泣かせの文章が気になってしょうがないのだそうです。
これも一種の職業病ですね。
でも、そう聞かされると、なるほどなーと納得。
この、ネガティブシンキングで、自虐。
内気なようで、なにをするやわからん。
というのは、先日書きました穂村弘サンに通じるものがあります。
けれども、やっぱりここにも性差があり、カクベツの個性もあり、
まったく違う味わいのエッセイなんですねぇ。
いやー、おもしろい。
ま、、、、好き好きはありましょうが。
(2007/9/23)