占庭に来られたお客さまに、一番よく言われる言葉。
「奈良さん、お好きなんですね」
わたしはもう20年くらい、美術家の奈良美智さんを追っかけていて、
占庭の店内にも、奈良さんグッズをいろいろ置いていたり、
展覧会のフライヤーや、ポストカードを貼っていたりします。
奈良美智という人を知らなくても、
その絵は、なんとなく見たことあるなあと思われるようで。
美智という名前から、女性だと思ってらっしゃる方もありますが、
ヨシトモさんという男性です。
奈良さんは三人兄弟の末っ子なんですが、
美智子妃のお嫁入りの翌年に生まれてはってね。
お母さんが、次は女の子だろうから、美智子という名にしよう、
と思ってらしたそうなんです。
そしたら、また男の子だったので、子を取って美智にしたとか。
わたしはこの、奈良美智っていう字面もすごく好き。
とても美しいと思います。
奈良さんの作品は、ダンボールの切れ端に描いたドローイングから、
アクリル絵画、皿絵、陶器、巨大なオブジェと多彩です。
作品が小屋、ということもあって、これまたとても素敵。
今まで、それはそれはたくさんの作品を観てきましたが、
いつも奈良さんのストイックな魂を感じます。
感応して、わたしの魂もふるえます。
こんな人と同時代に生きられて、わたしってなんてラッキー!
と思わずにいられません。
手元に、奈良さんを特集した2000年のアサヒグラフがあるんですが、
いまよりちょっと若いだけで、雰囲気はあまり変わっていません。
ファッションも、表情も。
当時は、まだドイツのケルンで創作されてたんですけど、
倉庫みたいな工房で、パンクロックをガンガンかけながら、
孤独に描いてはったころ。
いまはその場が那須に移っただけで、
同じように独りで美術と向き合う生活です。
長年、追っかけてますが、一度も幻滅されられたことがない人です。
文章もたくさん発表されているし、
いろんなイベントにも参加していて、閉じた人ではないんです。
多くのものを発信されていても尚、イヤだなと思ったことがない。
それってすごいことですよね。
作品も人間的にも、いつも奈良さんは奈良さんで、
きちんと誠意とベストを尽くしてはるのがわかる。
ああ、わたしもがんばろう、って思えるんです。
自分が自分を裏切ったらあかんなあ、って励まされる。
ただただ好きっていうのもあるけど、
しんどいなあって思うとき、奈良さんの作品に触れて、
自分のキモチを立て直すためにも、
占庭は奈良さん仕様になっているのです。