昨夜、ヘンな夢を見ました。
わたしは昔から毎日、フルカラー3本立てくらいの夢を見ていて、
ヘンな夢は日常茶飯事なのですが、ちょっと雰囲気の暗い夢で。
先日、熊本の知人宅へ荷物を送ったのですが、それが、
「割れて届いたのよ~」と連絡があった夢だったんです。
何かが「割れる」夢って、なんか縁起悪そうでイヤですよね。
まさかほんとに割れてないやろなあ、と思っていたら、
たった今、運送会社から連絡があって、
「申し訳ありません。破損してしまいました」って。
えええ~~~~~っ!
正夢?
そんな正夢いらんなあ、と思ったけど、割れて届いたんじゃなく、
届く前に割れてたのなら、まだマシか、、、、と。
もちろん荷物は弁償してくださるらしく、同じものを届けてくださるそうです。
霊感なんてなくても、こういうこともあるんですね。
ほんとに、たまたまなんでしょうけれど。
一週間ほど前に、このブログで紹介した詩人の伊藤比呂美さん。
現在はカリフォルニア在住ですが、一時期、熊本にお住まいだったので、
今回の震災に心を痛めておられます。
いま50代の方なら『良いおっぱい、悪いおっぱい』から続くシリーズものの、
子育てエッセイをご存知の方も多いと思います。
わたしはこの本を友人から「懐妊祝い」とプレゼントしてもらって、
大ファンになり、それ以降、妊娠、出産、育児と、
このシリーズにお世話になりました。
伊藤さんは詩だけでなく、エッセイも小説も、新聞の人生相談の回答も、
朗読会もと、とにかく幅広い活動をされています。
もうブンブンと高回転で飛び回るがごとくです。
夫婦生活にも、子育てにも、介護にも、いっぱいいっぱいつまづきながら、
それでも何からも逃げずに、精一杯力を尽くし、
それで足りないところは、もう諦める、というスタンス。
やれるだけのことをやる努力はするけれども、
人間、自力でやれることしかやれない。
とでもいうように、ジタバタさを隠さず、エエ人ぶらないところが大好きなんです。
で、今日は伊藤比呂美さんのちょっと珍しい著書を紹介します。
『日本ノ霊異(フシギ)ナ話』伊藤比呂美
帯には、
日本最古の仏教説話集
『日本霊異記』から 21世紀に転生した
14の極上の官能小説
とありました。
キャッチコピーは、
「愛欲 だけは 手に 負えない」
です。
この惹句は、あざとい。ちょっと気に入りません。
ソレが売りの作品じゃあありません。
文庫あとがきにも書いてありましたが「日本霊異記」に材はとっているものの、元ネタであり、現代語訳ではなく、
「ふくらましすぎたのもあり、ふくらませる過程でゆがんじゃったのもあり、はれつしちゃったのもあります」
「これは伊藤比呂美のお話です」
ということで、そりゃあそりゃあ、ベッタベタの”生”の物語です。
”性”の物語ではないんです。
書いてあることは、セックスがらみなんですけどね。
あるがままの”生”の営みにほかなりません。
それがあまりにも生々しくて、官能的というよりは、本能に訴えてきます。
これは作者が「景戒(きょうかい)」という僧に惚れこんで、書いたお話です。
この景戒、
「わたくしは僧ではありますが、俗人のように寺のそとに住み、俗人のように妻帯しています。子どももおります。何人も生まれましたが、何人も死にました。幼い子どもが死なない世がきたらばどんなによいだろうと考えます。死んでいく子どもを見るのはとてもつらい。それをみずからの手で焼き、埋葬するのはさらにつらい。それでもわたくしは妻と性交します。性交は楽しく妻はいとしい。妻は飽きることなくはらみ、痛み苦しみを冒して、産んでゆきます。わたくしはそれを養うために、あくせくとかけずりまわり、汚泥の中をのたくりながら、各種の罪をむすうに作りだしながら、生きようとしております。前世で何の善きこともせず、また未来のために善きことをしようという余裕もありません。欲望も、執着も、こびりついて離れません。極貧から、煩悩から、逃れられません。何というぶざまな生き方か。」
と自らを語っています。
このとき西暦787年です。
全部ではありませんが、この景戒が語るフシギな話が、この作品集です。
詩人の文章らしく、ひらがなと漢字の使い分けに、違和感を感じる向きもあろうかと思いますが、ぐいぐいと引き込まれること、必至です。
ひとというのは、こうして醜態をさらし、罪を重ねながら、それでもなんとか誠実に生きたいと願っているのだな。
と、胸に沁みます。
そういう人間に、仏教はやさしいな、とも。
あとがきで、伊藤比呂美さんが景戒のイメージを語っています。
「たぶんすごく愛らしい人だっただろうと想像します。背は低くって、まじめで、性格が良くって、よく勉強して、いっぱい本を読んでいて、エロい話が大好きで、セックスも大好きで、妻のことも子どものことも大好きで、草や木や星も好き。」
ああ、それは、色気と愛嬌に加え、知性まで兼ね備えた理想の男ではないか!
そりゃ惚れますって。
しかし、これがまた作者の”惚れた欲目”っぽいところがよいのです。
もちろん、わたしも惚れました。
ええ、ぞっこんです。
(2007/11/11)