京都 四条高倉の占庭から

別れ

しばらく占い師らしいことを書いてないので、今日こそは、

と思っていたのですが、昨日から、よしもとばななさんの本を読んでいて、

その小説がじんわりこころに響いたもんで、決意が流れ気味なのです。

が、占いのことも書いていきましょう。

 

読んでいたのは『スナックちどり』というお話。

帯にはこうあります。

 40歳を目前に離婚した「私」と、

 身寄りをすべてなくしたばかりの、いとこのちどり。

 イギリス西端の田舎町を女二人で旅するうち、

 魔法にかけられたような時間が訪れるーーーー

 

自称・書籍の帯評論家のワタクシとしましては、この帯はイマイチ。

魔法なんて言っちゃうと、薄っぺらいし、

なんかファンタジーみたいになってしまう。

もっと現実的な「別れ」からくる圧倒的な「淋しさ」の物語です。

 

選択する別れもあれば、避けようのない別れもありますよね。

つらかったり、悲しかったり、後悔したり、傷ついたりすると同時に、

懐かしかったり、せいせいしたり、感謝や愛を感じたりもするわけで。

そういう気持ちが実に丁寧に描かれていました。

ストーリーのおもしろさではなく、ああ、そんなことあるよね。

そういう気持ち、誰もが持ってるよね、って、沁みてくるような、

読んだ人それぞれがそれぞれのポイントを突かれる作品でした。

最近のよしもと作品にありがちな、オカルティックなところもなく、

素直に読めて、素直に受け容れられました。

いま、恋をしている人も、そうでない人も、

誰かを喪った人も、喪おうとしている人も、

結婚している人も、不倫している人も、

みんなどこかで、ああ、、、、と感じるところがあるんじゃないかな。

難しい小説ではないので、するする読めるんですが、

つーーーっと読んでしまうのではなく、

一旦文章を肌の上に載せて撫でてみるように読んでほしいなあ、

と思うようなお話でした。

 

わたしが突かれたポイントはこちら。

 

 私は人よりも自分が静かに控えめにしていないと落ち着かない。

 自分のほうが重い荷物を持っていないと、仕事をしたという気がしない。

 仕事の地道な蓄積と、それで得た評価が私を条件づけてしまったのだ。

 人間は成長した地点から昔に戻ることはできない。

 それが成長の代償なのだ。

 

うまく書いてあるなあ、って思います。

ありますよねぇ、こういうことって。

 

そして、これはまったくその通りね、という文章。

 

 人と別れた直後は、おうおうにしてそういうものだ。

 すぐにでもよりを戻せそうなくらいにいいところだけを思い出してみたり、

 それで限りなく目の前が真っ暗になって、

 まだ会えるんならなんでもすると思いつめてみたり、かと思うと

 別れた理由が急に切実に迫ってきて仕方ないと納得したりを繰り返すばかり。

 そんなことをしているうちに時間のほうがどんどんたってくれるのを

 待つしかない。

 

これは誰にも経験があることじゃないですかねぇ。

堂々巡りの先に、結局は時間が諦めさせてくれたり、

忘れさせてくれたりするんですよね。

 

友だちとの別れ、恋人との別れ、夫婦の別れ、家族との別れ、

いろいろあるわけですが、占い師としてお話をお聴きすることになるのは、

そこに苦さや痛みや困難があるからなんですね。

誰も傷つかない別れなんてないです。

自分も相手も、もしかしたら周りも巻き込んでしまうことだってあります。

だけど、生きていれば出会いもあって、別れもある。

「さよならだけが人生だ」とは思いませんが、

それくらい「別れ」は誰もがどうしようもなく、

たくさん経験することなのでしょう。

 

でね、この「別れ」に適した年回りというのもあるんですよ。

後腐れなくすんなり切ることができるとか、別れる勇気を出せるとか。

(いや、しかし、この後腐れって、なんとも言えない言葉ですねぇ。)

反対に、いつもの自分の精神状態でない年回りというのもあって、

そういう気持ちの振れ幅が大きな時に、別れを決めてしまうと、

たいがい、後に大変後悔することとなってしまいます。

 

「別れたい」「別れた方がいいですよね?」とお尋ねのお客さまには、

まず状況と、お気持ちをゆっくりお聴きします。

そして、お二人の相性、今の運気を観て、

その上で、将来のお客さまの大きな運気の流れと、

お客さまの意志を併せてみて、お返事をさせていただいています。

「別れ」は新しい出発点でもありますが、

それが幸せへの出発か、苦労への出発になるのかは誰にもわかりません。

お客さまの人生はご自身がお決めになるものです。

が、ご自身の思いだけではどうしようもない場合もあります。

どうしてもお止めせずにいられない、ということもあります。

と言っても、お話しするまでが占い師の仕事。

その後、どうされただろうか・・・・

といつまでも気になるお客さまはたくさんおられますが、

こちらから連絡を取って、確かめることはできないのですよ。