先日、白浜のアドベンチャーワールドで、ミニカバを間近で見ました。
ミニと言いましても、カバだけに大きい。
檻の中に一頭だけいて、普通サイズのカバにはない愛らしさがありました。
哀愁漂うお尻に、小さなしっぽがついていて。
ああ、抱き締めたい!
と、すっかりファンになってしまいました。
ミニカバは世界三大珍獣のひとつと書いてあったので、
えっと、あとはジャイアントパンダと何?と考えながら忘れてしまっていました。
さっき思い出して調べてみたら、オカピなんですって。
意外。
「世界三大」からも「珍」からも「獣」からも隔たった存在にしか思えません。
ミニカバと初対面し、ミニカバとコビトカバは別モノなのかしら?
と、これもわからないまま放置していたのですが、同じなんだそうで。
コビトカバと言えば『ミーナの行進』のポチ子です。
もう愛しくて愛しくてたまらないポチ子。
小川洋子さんらしい、しんとした異世界感がひたひたと満ちてくるような、
ひそやかな小説で、おすすめです。
『ミーナの行進』小川洋子
この小説は「本屋大賞」を受けた作品です。
年上のお友だちが、読み終えて本を閉じたとき、ああ、ええお話やった、
と表紙を撫でたくなるような作品やと話してはって。
読み終えて、なるほどなあ~とその気持ちがよくわかりました。
静かで、上品で、特殊で、現実味はないのにファンタジーでもなく、
音もなくサラサラ流れる川のような生活がある、まさに小川洋子の世界でした。
『博士の愛した数式』も、そんな世界でしたよね。
主人公は、小学生から中学にあがってからの1年を
親戚の家で過ごすことになった女の子です。
この親戚は、母方の伯母さんの家なのですが、芦屋のお屋敷(洋館)です。
ドイツ人のおばあさんと、ベンツに乗っているスマートでダンディな伯父さん
(ハーフ)、伯母さん、おばあさんと同じ年代のお手伝いさん、
そして従姉妹の小学6年生になるミーナが住んでいます。
ミーナは喘息があり、病弱ですが、飛びぬけて聡明です。
みんな、いいひとばかりなんですね。
いいひとばかりですが、どんな家庭にも秘密はあるもので。
庭には、池があり、コビトカバのポチ子が飼われています。
ミーナは、このポチ子に乗って小学校へ通っています。
いくらなんでも、それはちょっと、、、、と思うわけですが、
この小説の特殊な世界ということで。
わたしはこのポチ子がもうかわいくて、かわいくて。
読んでいて、きっとポチ子はお話の中で死んじゃうんだろうな、
と思うとつらかったです。
読んでいる間中、仕事をしていても、お風呂に入っていても、
傍にポチ子がいてくれるような、そんな気がしてなりませんでした。
ポチ子は感情表現もしないし、鳴くこともなくて、
ただそこに居るだけなんですけどね。
その存在している、ということがどれほどみんなを和ませているか、
ということをそれだけうまく表現していた小説だったということでしょう。
主人公の朋子とミーナの1年は、かけがえのない宝物のような1年でした。
誰もが、そうしてどこかで大きく成長して、大人になったはずなんですね。
それを思い出させてくれるような、やわらかな、あたたかな小説でした。
(2008/6/15)