京都 四条高倉の占庭から

6月6日はモリヤマさんの日

毎年6月6日になると思い出すことがあります。

就職した年のこの日、隣のデスクのモリヤマさんという男性から聞いた話。

モリヤマさんは、わたしの親世代に近い年齢だったので、

当時は、職場の中年のオジサンという位置づけでした。

なにしろまだ入社2か月余りで、気心も知れていない。

新入社員の隣の席でも、モリヤマさんは愛想よく話しかけてくる人ではなく、

どっちかって言うと、クールでドライなオジサンでした。

 

そのモリヤマさんに突然、

「6月6日って何の日だか知ってる?」

と訊ねられました。

えっとー、3月3日がひなまつりで、5月5日がこどもの日で、

4月4日はオカマの日とか、そういう話?

と頭の中で考えたけど、6月6日は浮かんできません。

「いえ、知らないですけど・・・・」と言うと、

「UFOが落っこちた日だよ」

と真顔で答えられました。

「えっ、どこにですか?いつのことですか?」

とたたみかけると、

ドラえもんの絵描き歌だよ。知らない?

 6月6日にUFOが あっちいってこっちいって 落っこちて~♪」

モリヤマさんはちょっとだけ得意そうに歌ってくれたのでした。

 

ええ、脱力しましたね。

まだまだ緊張してたんだろうなあ。若かりし頃のワタクシ。

 

その後も、モリヤマさんはあまりたくさんは喋らない人でしたが、

個性は強い方だったので、けっこういろいろ覚えています。

とにかく鳥がお嫌いで。

「オレは目が大きいから、クチバシで突かれそうで鳥は大嫌いなんだ」

というのは何度か聞きました。

たしかに大きな二重まぶたの目をされていましたが、

だからといって、クチバシ恐怖症になるもんだろか?

という違和感が、毎度毎度胸をざわつかせるのでした。

 

奥さんが美人ということでも有名で、人から言われても否定しないし、

自分は大変な面食いである、と公言して憚らず、

「どんな美人でも3日見たら飽きるね」

と、やっぱりニコリともせずに話しておられました。

ええ、ここは自慢です。

クチバシが怖くて鳥が嫌いな話よりも、うんとたくさん聞きました。

 

クラシック音楽が好きで、休みの日は家でレコードを聴いているという話も、

ああ、美人の奥さんがおられる家でね、と想像できました。

 

その会社はスポーツレクリエーションが異常に盛んで、

ソフトボール大会、卓球大会、バレーボール大会、ボウリング大会、

サッカー大会、水泳大会、もちろん運動会も、さらに駅伝もあったんです。

あ、バドミントンやインディアカもあったし、レガッタもやりました。

チーム編成の際、45歳以上の男性は女性と同じ扱いになるルールになっていて。

たとえば、職場で5人組のチームを作るとしたら、

そこに女性か45歳以上の男性を2人入れないとダメ、とかね。

モリヤマさんは、その「女子と同程度の技量&体力」扱いになるというのを

ひどく不本意であると訴えてはりました。

だから、モリヤマさんはそれくらいの年齢だったわけですね。

今思えば、まだ若かったんやなあ。

それでも、当時は定年が55歳だった時代。

45歳と言えば、定年まであと10年という位置だったわけですね。

早っ!

65歳定年に移っている今の時代では、

まだまだ働ける55歳で隠居してどうすんの?って思いますよね。

それだけ早く年金も支払われていた、っちゅーことですけれどね。

 

先日、夫が55歳の誕生日を迎えて、

「世が世なら、晴れて定年退職だったのにな~」

と半笑いで嘆いていました。

暮らすためにも、元気で遊ぶためにも、あと10年はがんばってねー

と、心から、心からの、エールを送るわたくしでありました。