京都 四条高倉の占庭から

新社会人のみなさんへ

最近、つくづく思うのが、ハブラシの優秀さです。

面積においても、そのブラシの強靭さにおいても、

タワシの方が威力を発揮するに違いない!

としか思えないにもかかわらず、あの毛ほどのブラシ、

しかも使い古しのハブラシが、よりゴミ・汚れを排除し、よい仕事をしてくれます。

それでいて、つつましやかな佇まい。

ハブラシ、えらいー ハブラシ、すげー

と心の中で大絶賛です。

水回りの掃除で、大活躍のハブラシを褒め称えながら、

これならば、歯の隅々までキッチリ磨けて当然である。

安心して任せられるというものだ。

という気持ちにもなるのでした。

 

さて、4月の第一週目が終わろうとしています。

新社会人のみなさんにとっては、長い一週間だったのか、あっと言う間だったのか。

いずれにしても、自分では気づかない疲労が蓄積しているはずなので、

とにかく夜、早めに就寝してくださいね。

眠くなくても早い時間にお布団に入りましょう。

フル回転した脳をまずは休めてあげてください。

 

毎年、就職する若い人にしている話があります。

それは、

「デキる新人になろうとしないこと」です。

どんな人も、とにかく、がんばろう!と思って入社されます。

同期入社の人が多い会社であれば、そこで負けないようにしよう、

と思う人もいるでしょう。

できれば、上司や先輩に、

「お、こいつデキるな! やるな!」と思われたいと考えたり、

そう思わせたい、という密かな野心を抱いたりもするでしょう。

そこそこ自信のある人、目指すところが高い人ほど、そうなります。

 

そうすると、まず何をしてしまうかというと、組織の悪いところ探しです。

これは無意識の内にやってしまうのですけれど、

組織の穴、不具合、理不尽、非効率さなど、目につく悪いところが、

もう気になってしょうがない。

まず、やらなければならないこと、覚えなければならないこと、

身に着けねばならないこと、よりも、そっちへ目が行ってしまうのです。

そして、

 こんなこと、こうすればよいのではないか?

 どうして、こんなまわりくどいことを。

 組織の中に埋もれてしまうと、こんなことすらわからなくなるの?

と考えがちです。

そう気づける自分は優秀である、とどこかで思ってしまうんですねぇ。

 

けれども、入社してすぐに気づけるようなモンダイが、

新入社員によってカイゼンされるくらいであれば、

たぶんとっくの昔にどうにかなっているはずなんですよ。

そうはいかない事情や、からくりや、必要性があるということなんですね。

それは、時間の中で経験を経て、なるほどなあ~とわかること。

なので、もし、気づくことがあったとしても、それは口にしないこと!

ということを毎年話しています。

それは、長いものには巻かれよ、という意味ではないんですよ。

何もしなくていい、というのではないんです。

気づいたダメポイントは、手帳に書き留め、温めておく。

そして、自分なりに対策や、改善方法を考え、それもメモしておく。

で、半年後、1年後、もしかしたら、もっと先になるかもしれないけれど、

それを提案し、実行できる実力がついた時に、自分が変えていくぞ!

と思っておくべし、ということです。

これ、案外難しいですよ。

 

それと、本当にデキる人っていうのは、組織の良いところに気づける人なんですね。

 このシステムは素晴らしい!

 よくこんなにうまくできているものだ。

とわかる人は、たいへん頭がいい。頭がやわらかいとも言えます。

まずそこがわからないと、悪いところを良くしていくのは難しい、

ということでもあります。

 

けどね、めっちゃデキる新入社員なんて、かわいくないですよー

それに、最初に「デキる」イメージをつけてしまうと、後がしんどい。

「すごいヤツが入ってきたなーって思ったけど、案外そうでもなかったな」

と言われるのは、結構つらいものがあります。

それよりは、

「ホント最初はどうなるかと思ったけど、やれるようになったやん」

と後々、がんばりを評価される方が、ずっとイイ。

ですので、最初はちょっとできないキャラで入っていった方がいいのかも。

 

会社というのは組織です。

組織の中には、いわゆる「正義」とは微妙にズレた不文律もたくさん存在します。

それらを受け容れたり、かわしたり、撥ね返したりしながら、

どう自分なりに折り合いをつけ、よい仕事をしていくか。

もしくは労働の対価を得ていくか、です。

 

もしかしたら思い描いていた「働く」とは違うものにぶつかってしまうことも

あるかもしれませんが、ポキンと折れてしまわないように、

撓う(しなう)力を身に着けていってくださいね。

決して自分を責めすぎて、ギリギリまで追い詰めないようになさってください。

 

まだ社会に出たばかりで、できることなんて知れています。

どんなに周囲の期待が高かろうが、大きかろうが、

それを額面通り受け止めて、全力疾走しないことです。

全力疾走が続かないことくらい、ふつうに考えればわかることですものね。

ふつうな自分のままでできることを精一杯やっていきましょう。