京都 四条高倉の占庭から

バイリンガルではありますが

今日は海外から一時帰国されているお客さまがいらしてくださいました。

年に一度、これで3年目になるでしょうか。

よその国の暮らしのお話って、とってもおもしろいんですよねー

海外で働くこと、生活全般、恋をしたり、結婚したり、病気になったり。

日本とはまったく違う制度やしきたりもありつつ、人が生きていくのは、

どこでも同じなのかもしれないなあ、と思ったりもします。

わたしは、長く海外で過ごした経験がないし、おそらくこれからもないだろうとは

思うのですけれど、お話を聴くのは大好きでね。

いろんな疑問、質問がどんどん湧いてきます。

テレビや本やネットで知るのではない生の情報というのは、

それはそれは刺激的で楽しい。

外国語ができるって、いいなあ~

わたしも、関西弁と岡山弁のバイリンガルではあるんですけれどね。えへへ。

 

 

今日から、鏡リュウジさんの『タロットの秘密』を読み始めているのですが、

これがすごくおもしろい!

タロットや占いに対するスタンスが、とても共感できます。

鏡さんは占い師というよりかは、研究家の色合いが強い気がするので、

その距離感が心地よいのかもしれません。

 

なにしろ筋金入り占いフリークのわたくし。

占いの本も、それはそれはたくさん読んできましたし、ブログなども読みます。

文章だけでも、その人が信頼できそうかどうか、っていうのは、

なんとなく感じられるものですよね。

それが確かかどうかはわからないけれど、自分が、

「この人いいなあ。好きだな」と思えるかどうかはわかります。当たり前ですけど。

ダメなのは、コケおどしっぽいやつですね。

不幸とか破滅とかいう言葉を使って、脅したり、不安を煽る文章を書かれると、

この人は、違う世界の人だな、と思ってしまいます。

そういう文章は刺激的だし、怖いもの見たさみたいな作用もあって、

ついつい読んでしまうものだし、世間受けもするのだろうなと思うのです。

ベストセラーになることだってあったりします。

 

でもねー、占いってそんなものではないはずなんです。

怖がらせたり、自信を失わせたりして、依存させてしまう、なんてことは、

占い師が一番やってはいけないことだと思うのですよ。

占いは、個性や才や運気を知って、上手に生かしていくためのものですしね。

ですので、そういうスタンスで書かれている本に出会うと、

とてもうれしくなります。

なんだか「大丈夫。間違ってないよー」って言ってもらえたようで。

 

 

では、久し振りにカテゴリ「読書」・本の紹介をしますね。

車谷長吉(くるまたに ちょうきつ)さんの作品を。

車谷さんは、もう亡くなられましたが、その作風は非常に暗い。

極端にネガティブな作家なのですが、新聞の人生相談の回答もされていました。

よくまあ、いつもいつも人を恨み、世を呪ったような小説を書いてらしたこの方を

抜擢したものだなあと驚いたのですが、その回答がとてもよかったんです。

正しく、明るく、健康的で、教育的なものとは隔たった回答が、

時には小気味よく感じられました。

そう。世の中そんなキレイなものだけで、できてはいませんものね。

車谷さんを回答者に、と考えた人、えらい!

 

『鹽壺の匙』車谷長吉

血を吐くような、露悪に満ちた私小説です。
ここに書かれていることがすべて事実ならば、今なら三面記事を賑わし、

テレビのレポーターが駆けつけて大騒ぎになるでしょうね。
ひどい家庭内暴力や、虐待。

みんな昔の村社会のなかで隠蔽され、何かよからぬものが憑いているのか、

と憑き物落としで、まずは対処しようとした時代の物語です。
現代ならば、やれ幼児期の愛情不足だとか、トラウマがどうこう、

という分析になり、投薬、もしくは入院ということになるでしょう。

太宰治や寺山修二の作品に通じるような、誇張や大ボラも混じっているに違いない、

と思いつつ、これが全部事実なら、なんと激烈な子ども時代であったろうか、

と慄きます。

改行が極端に少なく、読んでいて息苦しくなるような、偏狭的でじめじめした文章。
脈絡のない言動と、衝動的な暴力。
もうワケがわかりません。
けれども、その一見ワケがわからない破滅的な言動が

段々と地面の深い深いところで繋がってくるような気持ちになってきます。
決して理解できてはいないのだろうけれど、

瞬間瞬間に「わかる」気持ちがふっと湧いたりする。

痛い、痛い小説です。

(2010/9/2)