京都 四条高倉の占庭から

「好き」を仕事に

昨夜は、道頓堀ZAZAまで芝居を観に行ってきました。

満員劇場御礼座という劇団の公演は、年に一度だけ。

それも大阪と東京、1年交代での公演です。

ウチの夫婦は超アウトドアの夫と超インドアの妻という組み合わせの上、

休日が重ならないので、一緒にどこかへ出掛けることは頻繁にはありません。

ライブ、映画、ショッピング、旅行など、一緒に行くこともありますが、

基本的には、お互いめいめいの楽しいことを尊重するスタンスです。

なので、この毎年冬にあるこの公演を必ず連れ立って観に行く、

というのは、我が家の大事な年中行事のようになっています。

  

満員劇場御礼座は、プロの役者さんの劇団ではなく、

仕事を持ち、その上で年に一度の公演をやってらっしゃる団体です。

それではアマチュア劇団なのかというと、そういうんでもないんですよねぇ。

演劇の玄人さん、という感じがしますから。

わたしは小劇場の芝居が好きでよく行きますが、

満劇の観客は、いつも行っている芝居の観客とは個性が違います。

だいたい、わたしが馴染んでいる小劇場は、客席に、演劇関係者が多いし、

関係者ではないお客さん同士であっても、

芝居の系統や好みが似ていると、なんとなく顔見知りっぽくもなっていきます。

ですが、満劇のお客さんは、満劇のメンバーが広告、クリエーター関係の方が

多いので、そういう業界の人たちがいくつかのグループで来てはるような感じで、

「バイト帰りです」みたいなお客さんがあんまり見当たりません。

わたしたち夫婦のように、劇団員と何のつながりもない観客は少数派なくらいで。

なので、やっぱりちょっと異色で、なんとなく客席の空気感も違うなあと感じます。

特に昨日は平日の夜でしたし、余計かな。

けれどもまあ、それと演劇の内容は関係がないので、

わたしたちはわたしたちなりに、芝居を愉しむだけなんですけれどね。

 

満劇の公演に通うようになって10年余りになりますが、

自分も10歳以上年を重ねたわけで、そりゃ年齢層も上がっていくよなあ、

と思いながら観ていました。

誰が観ても、笑ったり泣いたりできる、サービス満点の演劇のようで、

結構シニカルだったり、深かったりもするオムニバス6作品。

堪能してきました。

8(日)までですので、ぜひ!

https://mangeki.com/performance/201912/

 

満劇の方々は、演劇で生活されているわけではないのですが、

こうして、年に一度、4日間・6公演、カッチリとお客さんが入ります。

演劇とあんまりご縁のない方にはわからないかもしれませんが、

これって並大抵のことではないのですよ。その集客力たるやすごいです。

演劇が生活の中心ではないのに、というところが。

それだけのクオリティと人脈があるということですもんね。

 

 

さて、

「好きなことを仕事にできていいですね」とか、

「好きなことで食べていけるなんて最高ですね」とか、

サラッと何気なく言う人は多いですが、そんなにカンタンなことじゃないですよね。

たしかに、好きなことを仕事にすることは、そう難しくはない。

自分でそうしようと決めてやればいいわけで、わたしもそうしています。

けれどもそれと、それで生活を成り立たせる、食べていく、ということは、

天と地ほどの隔たりがあるんですよ。

人の何倍も努力、精進して、抜きん出た自分の世界をつくり上げ、

それにお金に換えられる価値をつけなければなりません。

職人、研究、芸術、芸能、商売、事業など、なんでもそうですが、

好きであれば努力、精進はできもしますが、お金に換えられる価値をつける、

というのは、自分の努力だけではどうにもできない部分もあるし、

好きであればこそできない部分もあると思うんですよねぇ。

 

好きなことで生活していくなんて、困難な道でしかないです。

それはとてもしんどいに違いないんですよ。

けれど、しんどいとは言えないし、言わはりませんでしょう。

そういう苦しい道を選んで歩んでらっしゃる人には、尊敬しかありません。

そういうプロの中のプロの仕事を軽んじない世の中であればいいなあと思いますね。