京都 四条高倉の占庭から

ブレイディみかこさんのエッセイ、オススメです

新型コロナの影響がどんどん広がっています。

外国の人気のない街の様子を見ていると、

近々、日本もそうなったっておかしくないのだろうな、と感じます。

桜も咲き始めましたが、今年は無邪気にお花見もしてられないような状況で、

世の中がどうなっていくのか、不安になりますね。

それでも、生活は続いていくわけですから、できる用心をして、

なるべく心身を健やかに保つよう心掛けるしかありません。

相手は未知のウィルスで、いま打っている手がそこそこ正しいのかどうかすら

誰にもわからないことで。

いま、生きている日本人で、こういう疫病による社会不安にさらされた人って、

ほとんどいないんじゃないでしょうか。

たまたま滞在してた外国で、そういう経験をした方は稀だと思いますし、

おそらくは99%以上の人が、初めての恐怖を経験しているってことですよね。

どんなことにも終わりはいつかくるので、さて、それがいつごろになるのか、

どういう形で決着するのかをちゃんと見届けたいです。

 

いま『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という本を読んでいます。

著者のブレイディみかこさんは、以前、筑摩書房のPR誌「ちくま」に、

『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』を連載されてて、

それがめちゃくちゃおもしろくて、ファンになりました。

6月に刊行されるようなので、改めてまた読みたいです。

ブレイディみかこさんは、音楽好きが高じて英国へ通いつめ、

音楽ライターとなって、英国で結婚し、子どもをひとりもうけられました。

その後、保育士になり、彼女曰く「底辺保育園」で保育を続けることになりました。

いま読んでいる本は、彼女のひとり息子が上品なカトリック系の小学校から、

上品ではない元底辺中学校へとイレギュラーな進学をし、

その息子さんの経験を通して、感じたことがつづられています。

『ワイルドサイド ー』を読んでいたときも、英国の労働者階級の人たちの暮らしや、

彼らにとってEU離脱はどういう問題だったのか、

また、英国人にとって、無償医療サービスはどういうものなのか、など、

実際に住んでいないとわからない話をたくさん知ることができたのですが、

今回は、保育や教育、学校、ボランティアなど、子育て視点での話なので、

また違ったおもしろさがあります。

 

他国の話を見聞きすると、つい、自国と比べてどうなのか、と考えがちですが、

それぞれの国に成り立ちや歴史があって、いまがあるわけで、

いいところだけ、悪いところだけを取り上げて、どっちがいいとか劣っているとか、

そういうことを考えるのは、ほんとにナンセンスだなあと感じます。

教育についても同じで、システムやプログラムの優劣とかそんなことよりも、

何をどう感じ、自分の考えにしていくのか、

その基本となるところを大人たちが誠実に育てる努力をすることが、

大事なのだろうと思います。

大人も子どもからたくさんのことを学び、子どもに育てられます。

それこそが子どもと関わる醍醐味ともいうべきところで、

お互いにとって、非常に幸福なことだと思います。

 

ブレイディみかこさんの文章は飾りがなく、とても率直で正直です。

読み手を教育してやろう、なんてところがないのがいいです。

「こういうことがあったの」と投げかけるだけ。

そこから考えるも考えないも、自分なりの判断をするもしないも、

それらは読み手にゆだねられます。

でも、そこに押し付けがないからこそ、必ずや、たくさんのことを感じ、

考えることになります。

ブレイディみかこさんの文章にはそうさせていく力があるのです。