京都 四条高倉の占庭から

ふたつのプレッシャー

近所のソメイヨシノが満開です。

明日は風が強くなるらしいので、散ってしまうかな。

 

4月に入って休業し、家で過ごしています。

メールや電話でのご依頼もあり、仕事から完全に離れた状態にはなっていません。

ほんとうにありがたいです。

店舗営業を休止し、現実問題としては非常に厳しいわけですが、

精神的にはとてもラクになりました。

新型コロナウィルスというのは、わからないことだらけなので、

絶対感染源にならない、という確実な方法はなく、できるだけの用心をしたとて、

不安はずっとつきまとっていたので、店を閉める、ということで、

その不安だけは払しょくできました。

 

それともうひとつ。

随分、前の話なのですが、自宅で整体のお仕事をされている知人がいました。

その方が、事情があって自宅での営業を続けられなくなり、

病院へ転職されました。

病院で働かれるということで、きっとリハビリとかのお仕事だろうと思っていたら、

病院内での用務員的なお仕事だと聞いて、驚きました。

他に適したお仕事がなく、その職種を選ばれたのではなく、

そのお仕事をやってみたいと思っての就職だったそうで、

せっかく、特別な技術をお持ちなのにそれを生かしたお仕事に就かれないのはなぜ?

と訊ねましたら、

「疲れたんです」

とおっしゃいました。

 

患者さんを元気にするためには、自分が常に元気でいなければならない。

いつも健康な状態であり続けなければ、というプレッシャーがないというのは、

とても快適です。

うっかり風邪をひいたら休めばいいんですから。

 

と晴れ晴れとしてらっしゃいました。

当時は、そのプレッシャーがどれほどのものなのか、

わたしに実感することはできなくて、そんなに? と思ったものでした。

けれども、自分ひとりで占いの店を始めてからは、それが身に沁みてわかりました。

ご予約をいただいていたら、その日時、

元気な笑顔で、お客さまを迎えなければなりません。

声が出ない、咳が止まらない、熱があるなどはもちろん、胃腸の調子が悪い、

頭痛がひどい、足腰の不具合で店舗までたどりつけないなど、

どれが起こっても困ります。

わたしの場合は、めまいという持病もあり、これは突然やってくるので、

常にその不安とは背中合わせです。

先日、4月から当面休業します、とアナウンスして、3月末の営業を終えた日、

明日、声が出なくなってても、天井が回り始めても、いいんだ(よくないけど)

と思って、肩の荷がドッと下りた気持ちになりました。

それでほんとにガクッと気が緩んで寝込んだりしたらイヤだな、

と思うくらいに。

 

ウチのような小さな店舗で、一日のご予約数がわずかであっても、

これくらいのプレッシャーがあるのだから、

大きな会場でライブや芝居、講演などをされる方のプレッシャーやいかに、

と察して余りあります。

大変だなあ、そういうお仕事の人。

体調の維持・管理と社会での役割を果たすということが切り離せないんですね。

長年、活躍を続けてらっしゃるミュージシャンとか、ほんとにすごいですよね。

新しいものを生み出し続ける創作のプレッシャーと、

精神と肉体のポテンシャル維持のプレッシャーと、両方あるわけで。

なんてことを休業して数日、考えておりました。

 

そして何をしているかといいますと、今日は豆を炊いています。

時間がたっぷりあり、家から出ず、気持ちが急いてない時にはぴったり。

なので、小豆とか金時豆とかじゃなく、もっと時間のかかるやつを!

という気分になって、黒豆にしました。

家中、いい匂いがしています。