京都 四条高倉の占庭から

最高の上司

先月、怒涛の忙しさであった占庭ですが、11月はとても静か。

とてもとても静かです。

このザップン! ザップン! の波、どうにかならないものでしょうか。

みなさん、紅葉狩りに行ってはるんかな。

 

 

昨日のブログの中で、髪結いの亭主にはやはりモンダイな人が多い傾向がある、

と書いたのですが、

いやいや、いかにも髪結いの亭主が良い方向へ振れることもあったやん!

ということを思い出しました。

髪結いの亭主のみなさんの名誉のためにも、書いておかないと。

 

わたしは住居や職が不安定な星の下に生まれていまして、

なかなか、根を下ろして生きていく生活とは縁遠い。

住居は今住んでいるところが9か所目。

仕事は、結婚、出産、離婚、病気、リストラ、倒産などで転職を重ね、

18歳から今までに、十数か所で働いてきました。

それだけたくさんの職場で働いてきたということは、

たくさんの上司、同僚、後輩、取引先の人との関わりがあったということです。

 

どこの職場にも、必ずや困った人がいます。

とんでもない人が一人いるために、却ってその他の人が一致団結して働きやすい、

みたいなことも稀にあったりしますが、たいがいは困った人のために

非常に消耗してしまうことになります。

そこをどう折り合いをつけて働くか、が、結構大きな重要課題でもあって。

以前、このブログでも書きましたが、わたしは対人運には恵まれているようで、

とんでもない人に大迷惑をかけられた、という経験はあまりなく、

ありがたいことでした。

人間関係で苦労されてる方は多いですものね。

 

で、誰が一番、職場の空気の元になるかと言うと、上司だろうと思うわけです。

もちろん、ムードメーカー的存在に救われるということもありますが、

上司がよいかどうかで、働きやすさが雲泥の差であることは、

みなさんも異論のないところではないかと思いますが、いかがでしょう?

 

転職の女王と呼ばれる(?) ワタクシ、いろんな上司の元で働いてきまして、

ダントツでいい上司だったのは、無能扱いされている上司でした。

その職場は、大企業の福利厚生施設の管理をする出張所のような事務所で、

定年も見えてきた、出世コースとは縁のない社員が派遣されてくる所だったのです。

そういう場所なので、その異動を不本意に捉え、焦ったり、悩んだり、

恨む気持ちを持つ人もおられました。

そんな中で、わたしの上司だけは、のほほんと仕事をしてらして。

いつも微笑んでいるような緩い表情で、動作もゆっくり。

仕事の話も世間話も同じようにふんわり、やんわりです。

自分もガツガツ仕事はしないし、他人にもがんばれとは決して言わない。

どうしてもしなければいけない仕事をできるだけ負担をかけずに、

滞りが出ないところまでやっておけばよい、というスタンスでした。

仕事で評価されること、デキルと言われることなんて、どーでもいいんです。

 

仕事をやる気がないとか、怠け者だと思われることも、

他人から一段低く見られることも、それでいいとばかりに、意に介しません。

ヘンなプライドが一片もないのです。

その上司の上司から見れば、歯がゆい部下のようでしたけれど、当の本人は、

えへらえへら笑い、意味なくコクンコクンと頷きつつ、やり過ごしてはりました。

そんな人なので、同僚、部下、関係業者の誰からも敵対視されず、嫌われません。

仕事を頼むときも、相手が誰でも同じ態度です。

穏やかにやさしく頼まれると、皆、気持ちよく引き受けます。

その度、笑顔で必ず「ありがとう」と言う人でもありました。

たまには無理なことを依頼しなければならないこともあるわけですが、

「ゴメンね。頼める?」と言われると、しょうがないな~と思ってしまうもので。

こういう時、断れないように、正当な理由をつらつら説明されるより、

ずっとやる気になるものなんですよねー

自然と、この上司の頼み事はすんなり通り、仕事は円滑に回っていました。

 

仕事ができない人と認識されていましたが、どうしてどうして、

そう思わせることで、過剰な期待を回避し、余裕のある楽しい会社ライフを

過ごそうとしてらしたんだと思います。

自分もラク、周囲もラク、が一番だと思っておられたんでしょうね。

バリバリ感はまったくありませんでしたが、あんなにゆるゆるで仕事のできる人は

他に知りません。

周囲の人が無理なく気持ちよく働ける環境を提供するという点で、

実に最高の上司だったのです。

 

そう。この方の奥さんが美容師さんで。

自分がバリバリ働いて出世して、収入を増やさなくてもいいもんね~

というスタンスでいられたのは、そういう理由もあったわけですよ。

奥さんがお客さんの都合で遅くなった日は、二人で食事に出掛けられるので、

おいしいお店もよくご存知でした。

そういうお父さんだから、娘さんたちにも慕われてらしたし。

 髪結いの亭主と揶揄されても、

「うん。そうなんよ。フフフ」

って感じで。

いやあ、最高の上司でもあり、人生の達人だったのかも、と、

実は尊敬している方であります。