東京は初雪だそうですが、関西もぐっと冷え込んでいます。
こんなに寒くなっちゃあ、秋は大急ぎで店じまいしなきゃいけませんね。
みなさまも、体調を崩されませんよう、お気をつけください。
しばらく本の話を書いていないなー、と思いついたので、
今日は久々に、ドラマや映画にもなった作品について。
まず、海堂尊さんの「東城大学医学部付属病院」を舞台とした
『田口・白鳥シリーズ』の第一作『チーム・バチスタの栄光』をご紹介します。
この作品から、シリーズを読み継いでいきましたが、おもしろいです。
映画だけをご覧になった方は主人公は女性だと思ってらっしゃるかもしれませんが、
原作は中年の男性医師、田口公平。
竹内結子さんとは似ても似つかぬタイプなんですよねぇ。
ミステリというよりは、医療系エンタテイメントという作品。
何冊か医師が書いた小説を読みましたが、どの本も本筋のお話に、
大学病院の独特の異質さと、大病院や地域医療の現場の過酷さを訴えています。
圧倒的多数である患者側の不平不満は巷にあふれていますからね。
それに対する反論もしたいだろうし、理解も求めたいのは当然。
職業が「医師」というだけで「あらまー、お金持ちなのね」というトクベツな扱い、
というのも、いいことよりはよろしくないことの方が多かろうな、
ともお察しいたします。
以前、大学病院の医師である方と知り合いだったのですが、
やはり長時間勤務をいつも嘆いていてらして、
マクドナルドの時給の方が高い、とこぼしておられました。
ま、そういう背景をさりげなく訴えつつ、わかりやすいキャラクタの登場人物が、
物語を展開していきます。
文章の硬軟もうまくて、デビュー作がこれ、というのはすごいなあ、と思いますね。
気になった点がひとつ。
難度の高い心臓のバチスタ手術を成功し続けていたことに対して、
「〇〇連勝」という表現をしていたこと。
医療の現場では、これは業界用語みたいなものなのかもしれませんが、
一般患者側には少々不快感を伴った違和感があります。
医師にしてみれば、難しい手術は「勝負」なのかもしれませんが、
手術の成功、失敗を勝ち負けという表現するのは、どうかな、と。
(2011/6/18)
そして、もうひとつは『神様のカルテ』。
こちらも映画化されましたね。
このシリーズもとてもいいんです。
今日は、その3をご紹介しますね。
主人公の一止(イチト)は30歳の内科医。
まだ若いのに、夏目漱石をはじめ、昔の小説が愛読書っていうことで、
言動がじじむさいという設定なのだけれど、
それにしたって30歳ではないよなあ・・・・ という違和感はありすぎかも。
なので、30歳とは思わずに、若い医師、くらいのイメージで読んでいると
ちょうどいい感じです。
同じく妻(ま、小説では細君なんですけど)も、あまりに昭和的なできすぎた女性
なのも、もうフィクションと割り切って読むしかないわけで。
それでも過酷な医療の現場や、医師・看護師などの病院の中のリアルな物語が、
そういう違和感をカバーし余りある小説です。
そうだなあ、医師だって、みなそれぞれに志があり、
おのおのの信じるスタンスがあり、ひとりの人間でもあるわけですよ。
当然のことながら。
そして、患者は信頼できる医師に出会いたいと思っているし、
ほんとうに人間的にも技量も判断も間違いのない人に診てほしいと
思っているんですよね。
客観的に考えたら、そんな人めったにおらんやろ、
ってことくらいわかるはずなのだけれど、患者になったときには、
誰もがその理想にすがりたくなってしまう。
キツいお仕事ですよ。
もちろんそれだからやりがいもある。
プライドももつ。
医師も教師も「先生」と呼ばれるお仕事。
やっぱり「先生」は、賢くて、人を人と思える人であってほしいなあ、と思います。
それはなかなか難しいことではありますが。
小説のラストで、まんまと泣かされました。
泣きながら、ずいぶん長く、こういう涙を流していなかったんだなあ、
と気づきました。
あんまり久し振りすぎて、ものすごく新鮮でした。
そういう意味でも、読んでよかったです。
(2012/10/15)