京都 四条高倉の占庭から

島田潤一郎さんの文章を読むと

今日は成人の日。

自治体によって、成人式が中止になったところ、延期になったところ、

決行したところと、まちまちです。

例年通りの行事ができない状況下で、成人を迎えた方々は、残念なお気持ちだと

思いますが、お祝いです。

成人、おめでとうございます。

 

今朝、夏葉社のツイートで、高知新聞に載った島田潤一郎さんの文章が

流れてきて、読みました。(拡大して読めます)

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親の気持ち、特に、父親の子どもへの愛情が伝わります。

そうだよなあ、親の子どもを思う気持ちなんて、育っていくものだし、

変わっていくものでもあるよなあ、と。

島田さんの文章を読むと、いろんな感情が渦巻いて、

わたしはいつも泣いてしまいます。

 

島田潤一郎さんは、夏葉社という小さな出版社の代表です。

(新しいレーベルの岬書店もあります)

初めて島田さんの本を読んだのが、ちょうど1年ほど前でした。

「古くてあたらしい仕事」という本には、島田さんがどういう気持ちで会社を

立ち上げ、働き、本をつくり、どう生きていきたいのかが、書かかれていました。

 

島田さんはうまく世の中を渡っていける器用な人ではないようで、

お勤めもなかなかうまくいかず、転職活動でも50社連続不採用となり、

そこから出版社を起こされました。

編集の経験もなく、元々は小説家志望で、起業したかったわけでもなく、

上昇志向もない島田さんが、現代の厳しい出版業界で、

しかもたったひとりでやっている小さな出版社を続けてこれらたのはなぜか?

この仕事が好きだという気持ちは、どのようにして生まれ、維持されているのか?


自分が大事にしたいこと、大事にしたい人、大事にしたいものなど、

大切なことを大切に慈しみ、それらが報われるよう誠意を尽くして取り組んでいく。

嘘をつかず、自分だけが得をしようとせず、駆け引きをせず、でも妥協はせず、

ひたすら真摯に仕事に向かう。

いい本をつくりたい。

いい作品をもっと知ってもらいたい。

手元に置き、何度も読み返したいと思う本にしたい。


それらは「売れる」本を売れる時期に大量に売り逃げるようなやり方の、

対極にあります。

全然、いまふうの事業のやり方ではないのです。

けれども、だからこそ協力したいという人もいるし、応援してくれる人もいる。

大儲けはできそうにないけれど、仕事を愛して、正直に生きていくことはできる、

というのは、とても魅力的です。

もちろん、それは容易ではないので、誰にでもはできません。

やっぱりそこには覚悟が要ると思うのです。

読んでいて、何度もうなづき、何度も涙ぐみました。

「ああ、やっぱりこれでいいんだ」と思えました。

こういう仕事の仕方、生き方、わたしは大好きです。

そしてわたしと同じように、大好きだ、と思う人が、

きっと世界中にたくさんいるだろうと思います。

そう思えることで、こころがふわっとやさしさに包まれるような気持になります。

とてもとてもいい本でした。

 

昨秋、「AERA」に島田さんのインタビュー記事が載っていたのですが、

うっかり買いそびれてしまって、図書館で貸し出し予約をしました。

その順番がやっと回ってきて、ちょうど今朝、借りてきたところでした。

なんという偶然。

 

インタビュー記事には、知っている京都の本屋さん、古本屋さんが出てきて、

それぞれの店主のお顔が目に浮かびます。

そしてやっぱり、読みながら涙ぐんでしまいました。

何なんでしょうね。

励まされるように感じ、うれしさに胸がいっぱいになると同時に、

自らを省みて、チクリと胸が痛む部分もあるのです。

 

11月に出版された「父と子の絆」も早く読みたいのですが、

ネット注文ではなく、この本はどうしても本屋さんで買いたくて、

あちこち行って探すのですが、まだ見つけられていません。

こうなったら、出会えるまで焦らずじっくり探しますよ。