京都 四条高倉の占庭から

浪費が止められないのです

「一月往ぬる、二月逃げる、三月去る」という風に、

1月、2月、3月はあっちゅう間に過ぎていくと言われています。

ですが、わたしは毎年、1月は長く感じるんですよ。

今年も、ああ、みっちりとしたひと月だった、、、、と思う節分前です。

東洋の占いでは節分で一年が終わり、翌日の立春から新しい年が始まります。

さて、今年はどんな運が巡ってくるでしょうか。

 

先日『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』という

長いタイトルの本を読んでいました。

なんかちょっとセンチメンタルですね。

www.shinchosha.co.jp

著者は臨床心理士公認心理師・博士(教育学)の東畑開人さんです。

 

占いはカウンセリングと似ているとよく言われますが、

わたしは全然違うんだけどなあ、といつも思ってしまいます。

たしかにひとの心の奥深くにある非常にプライベートなお話を聴く、

というところは似ています。

けれども、カウンセリングは「治療」の一環ですし、

しんどい心の状況を治していくもの、というイメージを持っています。

占いは科学的根拠のないもので占って、それぞれの占い師の言葉で伝え、

それを受け取ったゲストが、ご自身で判断されたり、消化されたりしていくもの。

クライエントではなくゲストなのです。

という考えを持っているので、あまり心理系の本は読まないようにしていたのです。

本を読んで、あ、これは占いにも応用できそうだな、なんて思ったら、

それはちょっと不純なのではないか、と考えたりもしたので。(まじめか)

東畑開人さんの著作は、いわゆる心理学の本ではなく、

心理の臨床について書かれていることが多いようなので、興味を持ちました。

読んでみて、いままで不思議に思っていたことのひとつが、

わかったような気がしました。

それが今日のタイトルの「浪費が止められないのです」です。

 

占いで話をお聴きしていて、

「このまま浪費を続けていたら、いつか大変なことになると思うんです」

「浪費はまずいとわかっているんですけど止められないです」

という方が少なからずおられます。

そして、老後お金に困ることにならないか占ってほしい、とおっしゃるのです。

そういうとき、わたしは占いながら、

「いつか破綻してしまうかも、、、と真剣に危機感を持ってらっしゃるのであれば、

 さすがにお金の使い方を考えられるだろうから、

 そこまで切実な話ではないのだろうなあ」

と考えていたんですね。

ところが、この本を読んでいて、ほんとうにまずい人もおられるのかも、

と認識を新たにしました。

 

それが書かれていたのは第2章の「心は複数である 馬とジョッキー」でした。

少し引用しますね。

馬はあなたの心の衝動に突き動かされる部分です。馬は現実を無視して、自分の欲求を満たそうとします。

これに対して、ジョッキーはあなたの心の舵取りを担っている部分です。現実を把握し、それに合わせて自分を制御するのがジョッキー。

ここにあるのは「コントロール」という関係です。ただし、そのパワーバランスはさまざま。

たとえば、馬が暴走して、ジョッキーが振り落とされそうになっていることがあります。そういうとき、心の劇場はロデオの世界になる。

あるいは、ジョッキーの行き過ぎた調教のせいで、馬がすっかり疲弊していることもあるでしょう。

もちろん、馬とジョッキーが息を合わせて、機嫌よく歩みを進めていることだってあるはずです。

人によって、心の中の馬が優勢か、ジョッキーが優勢かが違います。

その「優勢」の度合いもそれぞれ、ということなんですね。

わたしは自分でもジョッキー優勢タイプだと思うので、

断然、馬優勢よ! というタイプの人の心は実感としてわかりにくい。

なので、

 ほんとに困るくらいだったら、浪費を続けるなんて恐ろしいことしないでしょ

と悠長に考えていた、ってことなのだと気づかされたわけです。

おお、これは大変だ。

マジでヤバい人もおられたのかもしれない、ってことじゃないか!

 

ジョッキー優勢型の人間からすると、ひとまず現実をクリアして安心しないと、

馬を存分に走らせられないところがあります。

元気よく走り続ける馬を止められなくなるかも、という状況は実に恐ろしいこと。

けれども、走りたがっている馬を将来のために今、走らせないなんてナンセンス!

という馬優勢型の人の考えもわかります。(実際にはできないけど)

誰の心の中にも、馬もジョッキーもいるわけですよ。

ジョッキーに寄りすぎるとおもしろくない人間になりそうだし、

馬に寄りすぎると破綻に通じてしまうかもしれない。

バランスって大事。

だけど、バランスが少しグラついているくらいのほうが、

人間的な魅力があるようにも思うんですよねぇ。

バランスが取れた安定を目指せばよいというのではなく、

どちらかに寄りすぎたときに立て直せるバランス感覚が大事、

ということなのかもしれません。