京都 四条高倉の占庭から

『親不孝介護』(日経BP)をお勧めします

この時期になるとTwitterで流れてくる「エアコンの試運転をしよう」。

さっき、お店のエアコンでやってみました。

故障してないようで、ひと安心。

エアコンと言えば、最近、自宅マンションの隣の人が引っ越しされたんですよ。

廊下にあったエアコンの室外機が取り外されていて、え、お引っ越し?

と気づいたのでした。

わたしが住んでいる賃貸マンションは小さい子どもさんのあるご家庭が多く、

それはちょうど家の購入&引っ越しの多い年代ということでもあり、

両隣、何度もお引っ越しして行かれました。

入居のときはみなさん挨拶にお見えになるのですが、

退去の時は無言で去って行かれます。

引っ越しの慌ただしいときに、改まって挨拶に来てほしいとは全然思いませんが、

退去の時期は結構前からわかっているはずなので、たまたま顔を合わせたときに、

 実は〇月くらいに引っ越すことになったんですよー

くらいは言ってくれたらいいのになあ、と思います。

お家を買ってのお引っ越しならばお祝いを伝えたいと思うし、

いずれにしても「みなさんどうぞお元気でね」くらいは言いたいじゃないですか。

と思うのは、昭和な考えなんでしょかね。

 

それでは本日の表題。

これは先日読んでとてもよかった本なのですが、

『親不孝介護』って、なんかキツいタイトルですよね。

わたしは図書館で予約したのですが、本を借りに行ったとき、

出してくださった図書館のスタッフ(年配の男性)さんが、

「身に沁みるタイトルでドキッとしました・・・」

と思わず口にされたくらいです。

わたしもよい評判を聞いてなかったら手に取ることもなかったと思います。

bookplus.nikkei.com

タイトルはネガティブな印象を抱かせますが、
ちっともそういう内容ではありません。
むしろポジティブ。
親の介護というと、どうしても女性が主になってするイメージがありますが、
編集者でもある著者は男性です。
息子目線からの介護の本、新鮮です。
ひとり息子である山中さんは、東京で働いており、家族もあります。
新潟のマンションでひとり暮らしをしていたお母さんの介護が始まり、
どうすればいいのかわからない&予想外の出来事の連続に、
わかっちゃいるのに苛立ち、どんどん不機嫌にもなっていきます。
「仕事と介護を両立させる」というところに重点が置かれているあたりは、
さすが日経BPという感じ。
その山中さんの経験と、NPO法人「となりのかいご」の川内潤さんのプロからの
アドバイスや説明が、押しつけがましくなく、たいへん的確で、
納得できることばかりなのです。
みっちりとした情報量の本書ですが、サクサク読めて、ストンと腑に落ちます。
わかりやすい上にスッキリします。
親の介護あるあるの連続に、
 そう! そうなの!
と共感の嵐でありました。
読みながらほっとするところと、苦い後悔が蘇るところがありました。
それでも読んでよかった。
いやいや、そうじゃなく、もっともっと早くこの本に出会えていたらよかったのに!
と思っています。
 
仕事がデキる人ほど、介護の方向性を間違ってしまいがちなのはなぜか、
介護をがんばりすぎてはいけないのはどういう理由からか、
いちいち、なるほど~ と思えます。
当たり前ですが「親不孝でいいんだ」「介護はプロ任せで放棄してよい」
という内容ではありません。
親の介護という未知のことがらに対して向き合っていくとき、
「できるだけ親孝行しなければ」というある種呪いにも似た感情に
惑わされてはいけない、ということなのです。
子どもが考える「親孝行」は、自分の後ろめたさを軽減させるためのものに
なってしまいがち、というのはよくよくわかります。
情っていうのはそういうものですよね。
 
一番こころに沁みたのは、川内さんがおっしゃった、
「介護は撤退戦なのです」
でした。
どんどん良くならないばかりか、じわじわ前進することもなく、
できるだけ急激に悪くなっていかないように気をつけながら、
じりじりと後退していくことを受け入れていかねばなりません。
そこがキツイんですね。
しかも、介護される側、する側どちらもが、なるべくしあわせな状態を保ちたい。
そのためには、どういうふうに公的機関を使い、プロを頼り、
自分自身もどういうスタンスで親に心をかけていけばよいのか、が書かれています。
 ウチの親の介護は、まだ5年以上は先だろう
と考えている人こそ一読をお勧めします。
心構えができ、気負いは捨てられます。
そしてきっとバイブルになるでしょう。
この本のすばらしいところは、愛と現実の折り合いはつけられる、と思えるところ。
多くの人に読んでほしいです。